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犬の炎症性腸疾患について
犬の炎症性腸疾患とは
原因不明の慢性腸疾患が持続する病気で、IBDとも呼ばれます。
腸粘膜への炎症細胞の浸潤を特徴とし、内視鏡検査と粘膜生検(胃腸粘膜の一部を採取し顕微鏡で観察する)を行い炎症性の病変を見つけて診断します。
犬の炎症性腸疾患の症状
3週間以上に渡る慢性的な下痢や嘔吐などの消化器症状の他、食欲不振、体重減少を示します。
重症化すると血液中のタンパク質が消化管の粘膜から大量に消化管内へ漏れ出てしまい、低タンパク血症を示す「蛋白漏出性腸症」を引き起こすケースもあります。
蛋白漏出性腸症になると低アルブミン血症が起こり、
腹水が溜まりお腹が膨らむ
胸水が溜まり呼吸が苦しくなる
身体がむくむ(浮腫)
といった症状が起こります。
犬の炎症性腸疾患の食事内容
症状が軽度であれば、食餌を療法食に変更するだけで症状をコントロール出来る場合もありますが、食餌療法だけで完治することはありません。
炎症性腸疾患であればこの食餌という明確な答えはなく、その子によって合う食餌は異なるとされています。
低アレルギー性で消化が良く、脂肪がある程度制限されていて栄養要求量を満たす食餌が第一に推奨されています。
療法食は消化器疾患用や、アレルギー用の療法食を与えますが、フードを選ぶ際には獣医に相談しましょう。
食餌を手作りする方法もありますが、この病気では生涯にわたり食餌による症状の管理が必要になるため、現実的ではありません。
また、おやつを控えることがとても重要です。
犬の炎症性腸疾患の寿命
治療による効果は様々で、症状が改善し普段と同じように生活出来る子もいれば、難治性の場合では、様々な治療を行っても十分な効果を得ることが出来ずに死に至ることもあります。
柴犬は難治性の例が多いとの報告があります。
症状が重度であれば、数週間で死に至る可能性もあります。
犬の炎症性腸疾患の治療方法
食餌療法のみでの症状のコントロールが難しい場合には、抗菌薬や、ステロイド剤を中心とした免疫抑制剤などによる治療が必要です。
免疫抑制剤を使用し効果があれば2~4週間ずつを目処に少しずつ投与する量を減らしていきますが、完全には中止出来ないケースが多いとされています。
また、免疫抑制剤による治療中に下痢が止まったとしても、急に投与を止めてはいけません。
発熱やショックなどの命に関わる症状が出る場合があります(離脱症状と言います)。
炎症性腸疾患ではビタミンB12(コバラミン)の吸収不良が起こり、食欲低下などを示す低コバラミン血症になることがあります。
血液中のコバラミンの濃度が低い場合には、注射で週1回、その後月に1回補給することが推奨されています。
その他、腸内細菌のバランスが改善されるプロバイオティクスを使用することもあります。
プロバイオティクスはある特定の有用な腸内細菌の増殖を促すような食品成分で、具体的には乳酸菌やビフィズス菌などの生菌製剤です。
治療により症状がコントロール出来ることも多いですが、殆どの場合は長期間又は生涯に渡り何らかの形での治療が必要になります。
完治が難しい病気ですが、早い段階で発見し治療を開始することによって重症化を防ぐことができます。